大きな湯葉

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本当に仮面ライダーを知らない人による『シン・仮面ライダー』感想

誘われてシン・仮面ライダーを見てきた。

仮面ライダーの事はほとんど知らない(オタクがオフ会に持ってきたベルトしか見た事がない)ので、何がネタバレになるのかは一切わかりません。そういった配慮は諦めてつらつら感想を書きます。

初っ端からトラックに追われるバイク。平均的な映画では父が死ぬ回想から入りそうなものだけど、庵野はそんなことしない。「もしも自分が山道をバイクで走りながらトラックに追われてたらどうする?トラックは2台」修学旅行の夜、庵野くんが小声でそう話しかけてきた事を思い出します。きみはあの頃の憧れを捨てないまま大人になれたんだね。冒頭1分で思わず後方同級生面をしてしまう。

思ったよりすぐ仮面ライダーが出てきて思ったよりすごい量の血が出る。あまりに景気が良すぎてこの時点で笑顔になりました。執拗に頭を狙っているのが面白すぎる。

博士的な人から諸々の説明を受ける。仮面ライダーってサイボーグ的な存在だったんですね。今でこそトランスヒューマニズムとか言ったりするけど、たぶんオリジナルを放送した時にはトランスヒューマニズムという言葉は無かったか一般に知られてなかったわけで、最初に仮面ライダーを作った人のクリエイティビティに感心する。博士死亡。

勝手に他人を改造する遠慮のなさとは対照的に、元々バイク好きの主人公に戦うバイクを与える優しさが身に染みる。スケボーとかじゃなくて良かったね。

クモオーグでずっと引っ張るのかと思ったら割と早めに泡になって退場。清潔感が好印象。

シン・仮面ライダーは全体を通じて常軌を逸したテンポの良さで、次から次に敵が出てきては泡になる。庵野監督、本当は12時間くらいやりたかったのを頑張って2時間にしたんだと思う。本当は各オーグと部下の農作業とかもやりたかったのではないか。

サソリオーグ、人で倒せるんだ......と思った。これは全くの想像ですが、庵野監督は制服の人間が名もなき公僕としてバッタバッタと死ぬのが好きなのでは?憎いとかではなく、何者にもなれずに死んでしまうことを裏から肯定しようとしているというか。その感性は割と共感できます。

ベルトがインテークになっているからバイクで走らなければならないという説明、拙者のような設定にうるさいオタクにも納得感がありますぞ。後から風なしで始動できるベルトが登場したり、グラボみたいなベルトが登場したりで面白かったね。ベルトのファンが2連になってるのは分かりやすく「倍 !」という感じで笑った。あれならエルデンリングも最高画質で遊べるはず。

個人的には、トンネルで量産型の仮面ライダーが登場するシーンが一番良かった。同じ目のはずなのに不気味に見える量産型のシルエットがぼうと浮かぶのが良かった。庵野監督、量産型好きだね。私も好きです。

トンネル内をビュンビュン走りながら戦うシーンのかっこよさって万国に通じてるんじゃない?たぶん今度のG7でもこういうシーンの良さについて話し合うんだと思います。(フランス語で)

それから何やかんや他人が怖いと碇親子の様なことをいう蝶オーグのプシュ兄(ぷしゅけい)に寄り添うバーチャル妹と1号の優しさに眼球が滑らかになり、仮面ライダーぜんぜん知らないけど面白かったなと思いながら劇場を後にしたのでした。

他にも面白いところ(ロボなど)はたくさんあったが、全く仮面ライダーの事を知らなくても楽しめる良い映画でした。